ミセス・L・ダウ・バリエッタ。1847年生まれ。出生地不明。このモダン・ヌメロロジーの創始者の生涯について、残念ながら詳しいことはほとんど分かっていません。しかし彼女が残した数の理論は、その後のヌメロロジーの展開に対して決定的に大きな役割を果たしたことは事実です。
では、彼女がヌメロロジーの歴史に起こした革命とはなんだったのでしょう。それはそれぞれの数の持つ特性を、ひとりひとりの人間の「性格」や「運命」を表すものとみなした点にあります。すなわち、ちょうど星占いの星座が、人の性格や運命を示すのと同じことを、数を使っておこなったというわけなのです。
すでに数を使って人の性格や運命を分析する、というヌメロロジーの方法が確立されている今日からすれば、このバリエッタのアイディアは、なんてことのないことに思えるかもしれません。しかしミセス・バリエッタ以前に、そのような方法で数の原理を応用した人物は、事実存在しません。そういう意味で、ミセス・バリエッタの数の理論は、まさしく「コロンブスの卵」のように、その当時としては非常に画期的なアイディアだったのです。
ちなみに、バリエッタ以前のヌメロロジーがどのようなものだったか、ということについては後ほど改めて見ていきます。ここではまず、モダン・ヌメロロジーすべてのルーツとなったミセス・バリエッタの数の理論とはどのようなものであったのかを概観してみたいと思います。
ミセス・バリエッタのヌメロロジーのもっとも基本的な考え方をまとめると、おおよそ次のようなものになります。
すべては数である。
そして数はヴァイブレーション(振動)である。
従って、すべてはヴァイブレーションである。
ミセス・バリエッタは、このようなアイディアを、もともと古代ギリシャのピュタゴラスの思想に由来するものだと述べています。その中でも特に「天球の音楽」と深いかかわりを持っていると言います(ピュタゴラスの「天球の音楽」についても後ほど説明します)。
「すべてはヴァイブレーションである」。このことに関してバリエッタは、次のように説明しています。
砂粒から人間まですべては、自分自身の比率で振動し、その主音である自分自身の中心を周っている。それぞれのものが自分自身を探求していくに連れて、すべての偉大な自然の合唱、すなわち神々の聖歌隊の中に、その場所を見つける。
この文章だけでは、言っている意味が少し理解しづらいかもしれませんが、要するにバリエッタの考えでは、すべてのものはそれぞれ固有のヴァイブレーションを持っているということ。そして各自が自らのヴァイブレーションを知り、それに従っていくに連れてすべてのものはお互いに調和し合い、その結果、まるで全宇宙が美しい音楽のハーモニーを奏でているような状態になるということなのです。
モダン・ヌメロロジーのはじまりに位置するバリエッタのヌメロロジーの背景に、このような詩的で美しい世界観があったということは、心にとめておくべきでしょう。